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西沢渓谷(大久保の滝、三重の滝、竜神の滝、恋糸の滝、七ツ釜五段の滝)

滝めぐりにハマり始めた頃、滝には行きたいがどうしたらいいのかまったくさっぱりわからなかった。そうだ、滝についての本があるかもしれない。と思いつきで本屋に出向いた。しかし、滝は何にカテゴライズされるのだろう…。本屋をぐるぐる回ってまず見たのが観光ガイド本。「るるぶ」とか「まっぷる」である。試しに既に行った日光エリアのガイド本を見ると、うむ、確かに「華厳の滝!竜頭の滝!マイナスイオン!!」あたりは奥日光を楽しむ上での観光ルートとしてちらっと紹介してあった。うーん、確かに観光滝も良いんだけど…とページをめくる。そうするとそういう観光ガイド本には大概付いている巻末の地図が目に入った。一応ガイド本の中での観光ルートを辿った地図なんだけれども、ページ内にちらほら滝の名前が表記されている。そうか!地図か!閃いた私は今度は地図売り場へ。地図売り場へ行くと、関東周辺日帰りドライブマップという地図なんだけどもちょこっと観光情報も載ってるよ、な本があった。ぺらりとめくると…おおーっ!地図の中に滝の記号があちこちあるではないか!しかもちょっと名の知れた滝には一言コメントまでついている!これぞ滝への道しるべだー!とすぐに購入決定。購入後、すぐに家で開き、めぼしい滝の載っているページに付箋を貼りまくった。

美しい渓流

美しい渓流

さて、そんな中、次の滝はどこにしよう。この地図を見る限り、近くて良さそうな滝は…むむむ、西沢渓谷という所がわりと近くにあるなぁ、なんか凄そうな滝の写真も付いてる…と、前置きが長くなりましたが、よし!次はここに決定!!
着きましたるは西沢渓谷。ここは紅葉もとても美しい名所らしい。しかし私が行ったのは紅葉もとうに終わった年末も近い時期だった。さすが名所、駐車場広ーい…けれど車は1台も止まっていない。茶屋っぽい建物もあったがシャッターは降り、人気はない…。天気は曇り。そしてとても寒い…。若干の心細さも感じながら西沢渓谷に入って行った。
入ったらそこは別世界だった。エメラルドグリーンの清流。霜の降りた土。渓谷の両壁からは水がしみだし、それが何百とつららを作っている。渓谷の木々はほとんど葉を落とし、渓流の両岸に積り、より寂しさを演出している。誰もいない、美しい世界がそこにあった。

大久保の滝

大久保の滝

西沢渓谷への入り口は駐車場から吊り橋を渡り、急な階段を少し登る。するとすぐに大久保の滝が現れた。この滝は登り階段から対岸にあるので遠景からしか見えない。細い支流が滝となって渓流に注いでいるようだ。しかし、まだそんなに山奥でもないのに滝の周りには水しぶきが凍ったのか、それとも遠くない過去に雪が降ったのか、はっきりと白い輪郭がついていた。


三重の滝

三重の滝

大久保の滝を後にし、しばらく山道の上下を繰り返すと、目の前にばっ!と渓流が広がる。先ほどまでは渓流には沿っていたが、渓流の真横に出たのだ。そしてその目の前にあるのは三重の滝だった。この場所は三重の滝の真横にいることになる。道は左右に分岐しているが、右が散策ルートであって、左は三重の滝のための広場に続いている。広場へ降りると滝を含めた渓流がまるごとこちらに向かってくる。すごい奥行きだ。感動。三重の滝は、高さはそれほどないが確かに三重になっていて、その中の釜が大きい。滝を形成している岩が右へ左へと不規則にねじれているので水の動きも直線ではなく、あるがままに、流れている。


竜神の滝

竜神の滝

次の滝までは30分ほど渓流の真横を歩く。でもただの30分じゃない。渓流にある岩々が、清流の底に見える川底が、岩から染み出る水が作ったつららが、すべてが新鮮で美しい景観を作り上げているので飽きることはない。ただ、道は細い上に足元が凍っているのでつるつる滑る。道にそって鎖が打ってある所も多く、慎重に行ったので、こんな寒い時期じゃなければ30分もかからないのかもしれない。
次に現れるは竜神の滝。大きさはそれほどでもないが、渓流の本流にある滝としては高さがあるほうかもしれない。もうこの辺りまで来ると、私は滝以外の景観にも酔いしれてしまって、滝というより渓谷全部を感じ、楽しんでいたように記憶している。よって、写真をあまり撮っていなかった…。不覚。

恋糸の滝

恋糸の滝

また20分ほど渓谷を楽しみながら進むと、対岸に恋糸の滝が現れた。この滝は細いが落差が100mもあるらしい。が、全景を見ることができずあまりスケールを感じられなかった。ここも大久保の滝と同じように滝の周りが白くなっている。ふとそのことを踏まえて考えると、滝って山の中でもひときわ冷たく寒いのだろう。大きな大きな山に一筋の冷たい線が上から下へ、山を割るように走っていると考えると面白い。





七ツ釜五段の滝

七ツ釜五段の滝


恋糸の滝から40分。だいぶ山奥まできた。道は橋に変わり、ばっと視界が開ける。西沢渓谷メインの滝、七ツ釜五段の滝の登場である。もう言葉にならなかった。美しく、壮大で、しかし優雅で不思議な、様々な感情が湧き出た。日本に、しかも関東からそう遠くないこの場所に、こんな空間があったなんて。今まで知らなかったのがもったいない。なんでこんなにすごい場所を知らなかったんだろう。この滝を見られて本当に嬉しかった。駐車場にはほかの車がなかった。今までの道のりでも誰一人出会わなかった。季節外れが功を奏して今だけは、この場所は私だけのもの。そこで私はやってみたかったことを実行した。リュックに入れてきた、今朝握ってきたおにぎりを絶景を目の前に橋の上を陣取ってほおばる。あ~、幸せ、幸せすぎるよ~。誰もいないからこそできる幸せ。1時間はそこにいた。いつまで見ていても飽きないから、思う存分堪能した。

通行止…

通行止…

この先である。この西沢渓谷は渓流沿いに散策路ができていて大きく一周して駐車場までもどることができるコースである。メインディッシュは七ツ釜五段の滝なのだが、この先にもう一つ不動滝があるのだっ!がしかしっ!七ツ釜五段の滝の橋の端には左写真のような看板とロープが張ってあった…。(看板には12月1日~4月28日までは路面凍結のため通行不能とかいてあります。)滝好きとしては不動の滝も見たい、けれどこれじゃ仕方がない。七ツ釜五段の滝は十分堪能したし、来た道を戻ることにした。

この西沢渓谷、私は季節外れに行ったので人もいないし足場が滑って結構危険な散策路だった。だから予想よりも時間がかかったように思う。売店も閉まっていてひっそりとしていたが、実は後から調べてみたら、西沢渓谷は紅葉の季節には大行列ができるほどの混雑する観光名所だった。そんなことも知らないでいた私だからこその新鮮な感動もあったのかもしれない。そして是非書いておきたいのは、西沢渓谷の近くに「道の駅みとみ」がある。ここは駐車場も広くトイレも24時間使えるし、昼間なら売店や食堂も開いているので休憩や物資調達には最適である。ここで食べたいのぶたラーメンもおいしかった。西沢渓谷に行くなら是非寄ってほしい所である。
後日談、約1年後、この道の駅みとみを通ったら、でっかい「西沢渓谷」の看板が立っていた。どうやら山梨が本気で西沢渓谷の観光に力を入れ始めたらしい。マイナスイオンも豊富で絶景も楽しめると新聞雑誌に採り上げられたようだ。皆様マナーを守ってこの貴重な大自然を壊すことなく楽しんで貰うことを願う。